先にあげたステロイドサイクルの後は、同じぐらいのオフ(休薬期間、ステロイドを使わない)を摂ることが定石とされている。だが、例えば12週間の長期間のサイクルの後に、10–12週間のオフを摂れば、完全に獲得した筋量、筋力をそのまま維持できるわけはない。どのくらいの割合が失われるかはケース・バイ・ケースであるので何割と明言することは難しい。そしてこのようにオンとオフを同じ期間を繰り返す使用方法は既に30年前からあったのだ。しかしここで疑問が沸きあがる。30年前、いや20年前のプロビルダーと現在のプロビルダーのサイズの違いだ。最高峰のミスターオリンピアの出場選手の平均体重を比較してほしい。またプロの資格を得ることが出来るアメリカのアマチュアコンテスト、ミスターUSAとNPCナショナルズにはここ最近に従来のヘビー級(90kg以上)よりも一段上の階級である、100kg以上のスーパーヘビー級が設けられた。コンテストコンディションで90kgの体を作ることすら非常に困難であるのに、100kgといえばとんでもないサイズである。もちろん当然ナチュラルでは不可能だし、また現在プロで戦うのにスーパーヘビー級の肉体は必要だ。
80年代に迫伝子工学の発達のおかげで実用可能になった合成ヒト成長ホルモンの影智も計り知れない。しかしステロイドの使用法もかなり変化しているようだ。20、30年前と同じ使い方なら、現在もサイズも同じはず。成長ホルモンも関係あるがそれだけではなく、ステロイドの使い方が違うという仮説が成り立つ。結論から言えば、多くのプロやトップアマチュアはノンストップにステロイドと成長ホルモン使っているようだ。一切ステロイドを使うことを止めずに数年間使い続けるというクレイジーとも思える行動をとっている人も珍しくないという。
副作用の問題はないかといえば十分あって、ここ最近のプロビルダーの巨大化と選手の寿命は反比例している。現在のトッププロは50歳まで生きることができるのであろうか? 最にしてもテストステロンを週に3000mg摂るだとか、週に10,000mgは摂っているという噂が尽きない。実際のところプロビルダーに問いても、正確な返答はないであろう。それは企業秘密だからだ。あくまでも予想することしかできない。
間違いなく、テストステロンは使用しているであろう。WARにもアメリカのプロレスラーはテストステロンを決して手放すことはない、と言う記述がある。レスラーよりも優れた体をしているビルダーも同様かそれ以上の事をしているだろう。
推論はこうだ。原則、年から年中ステロイドを使用しているが、実際はごく短いが、ステロイドを体内に入れない時期も設けている。また常にテストステロンなどを一定に大量には摂ってはなく、強弱をつけて用いているであろう。例えば、コンテストの前では、ハードに見せるためテストステロンを一日に2000mg程使っているかも知れないし、バルクアップの時期に大量に使っているかもしれない。
なぜこのようなノンストップで使うといえば、ステロイドのもう一つの側面、アンチカタボリック作用があるからだ。カタボリックはアナボリックの反対で筋肉の破壊を意味する。体内では常に製造と破壊が繰り返されていて、製造量が多ければ、筋量アップになるし、同じならば変化なし、破壊される量が多ければ縮小していくだろう。
ステロイドを使用すると、体をカタボリックな状態になるのを強力に防ぐといわれ、これもアナボリック同様かそれ以上に重要な働きといわれている。
だが、実際問題としてテストステロンを長期間使うことで体に悪影響を与えることはないのであろうか? 体内のテストステロンが高い状態が続けば、血液もドロドロになり心臓に悪影響を与えるといわれている。一方では高いテストステロンレベルは、悪影響を与えるどころか、心臓には良いという説もある。しかしテストステロンの濃度を心臓病の原因にするのは間違いであろう。確かに今後の研究結果を待つのも大事であるが、心臓病にはさまざまなファクターがあるはずだ。例えば、肥満や運動不足などもかなり関係があるはずだ。さらに言えば、現在心臓病の治療に専念している人達の多くが、若いときにアナボリック・ステロイドを多用していたとは考えにくい。あくまでも推測であるが、プロもしくはトップアマチュアは長期間、それこそノンストップでステロイドを使用していることが考えられる。
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